俺は考えに考えた。 あの鉄壁純情少女に自分の想いを伝えるには最早この手しか無いと思った。 結局回りくどいやり方をしても誠心誠意の言葉を伝えても 華麗にスルーされて終わるならいっそ彼女の脳裏に俺を焼き付けて 【俺】が目に焼きついて如何しようも無い状態になれば良いのだと思った。 計算に狂いは無い筈。 自分の慎重な性質を持ってしても執拗な程、考えに考えた結果だ。徹夜までした。 結局の所、シンプルなのが一番だと言う所に行き着いたのだ。 きっとこれならいける。彼女の頭は【俺】で一杯になる。 幸い今日は偶然ながら、真にご都合主義な展開ながら 撮影場所が近いせいで同じ旅館に彼女も泊まっている。 ご都合主義だと責めるなら筆者を責めるが良い。悪いのは俺じゃない。 もうリアリティーを出そうと四苦八苦して失敗して長文になるのが嫌らしい。 その話はそっと脇に置いて置くとして、今、彼女は部屋にいるらしく (そこは俺、抜かりない。社さんをスネークさせて情報収集は完全さ☆) この棟に宿泊するメンバーは俺と彼女以外、総出で飲みに出かけたらしい。 内心その他メンバーには用が無いのでそのまま調子に乗って泥酔して 集団アルコール中毒か何かで運ばれて入院しろ、と願う程度には帰ってきて欲しくない。 これからの計画を思えば―― そっと廊下の様子に耳を澄ませ誰も居ない事を確認すると 彼女の部屋に進んだ。 「最上さん?居る?」 「ああ!敦賀さん!今開けます!」 俺はあながち悪い風には思われていないんだろう、と思う程度には 彼女の声がワントーン高くなっていた。 「ち、散らかってますが…」そう言いながら戸を開き、俺の顔を見た後 違和感を感じたのか視線を下ろし、青ざめた顔でもう一度俺の顔を眺めた。 「敦賀さん…どう言う…」 「好きだ!」 「…はい?」 「余計なものは何もつけずに言うよ、好きだ!」 彼女は少し怯えた顔をしながらも震える唇で何とか言葉をひり出そうとしていた。 「俺は何も持ってないから怖くないよ!丸腰だよ!まっぱだよ!隠さないよ!君を傷つけないよ!好きだ!」 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 戸は俺の目の前で乱暴に閉まり、彼女が奥に走って行き何かを探す様な物音がした後 「社さんですか?大変です!と!と!殿がご乱心です!救急車を!」と言う切羽詰った彼女の声が聞こえてきた。 *** 俺の徹夜の計画は完全な筈なのに如何して今、 マネージャーに正座させられこんなに叱られなければならないのか…と不満で仕方ない。 【終わり】 ワンピースの身も心もボロボロなトニー・トニー・チョッパーに対する ヒルルク的な感じで。